ロシアのプーチン政権による「核威嚇」が続く。ウクライナのエネルギー供給の生命線になっている原子力発電所の占拠も、戦術の一端に組み込まれた▼核兵器と、あくまで平和利用である原発が別物であるというのは、国際社会の常識だと考えられてきた。しかし冷たい現実に触れると、これも「神話」にすぎなかったと思わざるを得ない▼そう思ったところで、ではどうするのか。まだ再稼働していないとはいえ、島根にも原発がある。日本の原発を国家間の戦争からどう防衛するかは、戦争を起こさない、起こさせないことが第一であることは言うまでもない▼北朝鮮や中国を念頭に置いた対抗策として、日本でも核保有の議論をタブー視すべきではないとの声が、安倍晋三元首相をはじめ自民党国会議員から上がっている。力を均等に保つ意味では有効だが、世界で唯一の被爆国として説明が付かない。議論するなら、万が一にもこの立場を捨てる覚悟があるかどうかが真っ先に問われる▼佐藤栄作元首相が表明した「核を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則は1971年に衆院で順守する決議をしたのに続き、76年に参院でもその忠実な履行を決議した。今夏の参院選で候補者に「その話は選挙後に」と言われても、任期は6年もある。国会で過去の決議を扱う「その時」が来たらどうするか、あらかじめ考えて戦いに臨んでほしい。(万)