5万人を超す観衆をのみ込みながらも、内野ゴロのボールがサクサクと芝生をかむ音がよく聞こえ、グラブに収まるパシパシという捕球音も心地よかった。米国ニューヨークのヤンキースタジアムで大リーグを観戦した際の遠い記憶。動と静のめりはりが利いた雰囲気は日本だと大相撲に近かった▼今年は米国から日本に野球が伝わって150年。野球はなぜ日本人を魅了するのだろうか。諸説あろうが、個人的な楽しみ方は屈折している。負け続きのプロチームのベンチに魅力を感じる。首脳陣の苦い表情に漂うダンディズム。消化試合のまったりとした感じ。「来季を見据え」とは聞こえがいいが、来季も駄目だと思いながら見るのがいい▼ずっと納得できなかったのが、長い間、元プロ選手が高校、大学で指導できなかった点。選手の引き抜きに端を発したのは理解する。しかし、各競技でプロが教える教室が普通にある中、野球はもったいなかった。アマも選手寿命は長くなく故障リスクもある。野球を飯の種にしてきた元プロの知見は宝だ▼近年状況は改善され、浜田高OBでプロで活躍した梨田昌孝さん(68)、清水雅治さん(57)も指導が可能になった。「当たり前」の広がりに期待だ▼甲子園では連日、高校球児が熱戦を展開し、プロ野球もきのう開幕した。新型コロナウイルス禍ながら、今年の観戦をどうしようか。野球で平和を実感する。(板)