スターバックス、コメダ珈琲店にドン・キホーテ。ドミノ・ピザやマックスバリュ、サイゼリヤもあった。この10年で山陰への出店が話題になった主な大手チェーンだ。これで「全国並み」になったと歓迎したい半面、大型店やコンビニを含めると、消費生活の画一化が押し寄せている気がする▼コロナ禍になる前の話だが、旅先の街でも見覚えのあるチェーン店の看板が必ずいくつもあった。特にショッピングモールなどが立地する郊外の風景や店舗は、どこの地方も似たり寄ったり。これがかつて評論家の三浦展(あつし)さんが象徴的なファストフード店になぞらえて「ファスト風土化」と呼んだ、郊外化の波による地方の風景の画一化なのだろう▼車による買い物を前提にした郊外化の波は、一方で「シャッター商店街」など昔からの商店街だけでなく、古い郊外の衰退も招き、いわば「街の使い捨て」につながりかねない▼それだからだろうか。松江の旧市街を歩いていて民家や空き店舗を改装した個性的な店を目にすると、春の息吹を伝えるフキノトウを見つけたときのようにうれしい。しっかりと根を張り来年も再来年も元気な姿を見せてほしい、と応援したくなる▼お年寄りや子どもが歩いて買い物に行ける街は安全で安心な街でもあるはず。街の画一化に頼らず、マイカーでの利用を前提にしない街づくりを、街の個性にできないものかと思う。(己)