1875(明治8)年春。天皇皇后両陛下の花見に献上する茶菓子を依頼された東京の老舗パン屋「木村屋総本店」の創業者親子は、どうしたものかと悩んでいた▼そこで目を付けたのが季節感を表現できる桜。奈良の吉野山から八重桜の花びらの塩漬けを取り寄せてあんぱんに埋め込むと、陛下は大層気に入ったという。それを記念し、献上した4月4日は後に「あんぱんの日」に認定された▼この日はあんこと縁が深いようだ。菓子製造、販売の丸京製菓(米子市旗ケ崎)によって「どらやきの日」にも認定されている▼桃の節句(3月3日)と端午の節句(5月5日)に挟まれた4月4日は、女の子にも男の子にも愛されるどらやきの二つのカステラの間に包まれたあんこをイメージさせるというのが理由。4月4日は、4を合わせた「しあわせ(4合わせ)の日」とされ、甘くておいしいどらやきを食べると幸せな気分になるとアピールする。左党には少々強引に聞こえるが、ホッとするのは確かか▼放送最終週を迎えたNHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』にも物語の鍵としてあんこが登場する。「おいしゅうなれ、おいしゅうなれ」。ヒロインがそう語りかけながら小豆を煮る「おいしいあんこのおまじない」は視聴者の心も温かくしてくれる。松江城山公園の桜も盛りを迎えた。酒はまだ無理でも、あんぱんとどらやきを手に花見へ出掛けようか。(健)