春爛漫(らんまん)。4月は始まりの月だ。入社式、入学式…。満開の桜に誘われて心浮き立つ時季なのに、昨年にも増して気がめいる。収まらない新型コロナウイルス感染に加え、2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻。40日たっても停戦は実現していない▼ウクライナ各地の被害は目を覆いたくなるほどのひどさだ。特に印象に残った映像が二つある。一つ目は首都・キーウ(キエフ)の駅だっただろうか、ホームで子どもが泣き叫んでいた様子。食料が入っているらしい袋を手にしていたが、親とはぐれたようで一人で泣いていた▼もう一つは、父親に抱かれた幼児が父親のかぶっているヘルメットを泣きながらたたいていた姿。母親とともに国外に避難する幼児がウクライナに残る警察官の父親と別れがたく「パパ、パパ」と言いながら抗議していた▼ロシアの侵攻は、ウクライナとジョージアの北大西洋条約機構(NATO)加盟を恐れるロシアに対して、ウクライナ側が「NATO加盟を進める」と表明したことが引き金となったという。国と国の事情はいろいろあろう。だが武力侵攻は許されない。当然子どもたちには何の責任もない▼自宅隣の家に半年ほど前、赤ちゃんが誕生した。時々、泣き声が漏れてくる。「今日は機嫌が悪いね」「お風呂が熱かったのかね」-。隣の老夫婦の会話も弾む。同じ子どもの泣き声だが、天と地ほどの違いがある。(富)