春になると街中に住んでいても、耳を澄ませば随分と鳥の鳴き声が聞こえてくる。にぎやかなさえずりに包まれ、鳥たちにも言葉があるのだろうか?と思いを巡らせていたところ、庭先にも姿を見せるシジュウカラが鳴き声を使い分け、文章で仲間に情報を伝えていることを知った▼シジュウカラは白いほおとネクタイのような模様が特徴で大きさはスズメと同じくらい。ヘビが来た時は「ジャージャー」と鳴き、タカだと「ヒーヒー」と声を上げて仲間に天敵の種類を正確に伝えるという。さらに警戒を促す「ピーツピ」と、集まれを意味する「ヂヂヂヂ」を組み合わせて「ピーツピ・ヂヂヂヂ」と1羽が鳴けば、周囲の仲間がキョロキョロしながら集結するらしい▼こうした高度なコミュニケーション能力が確認されたのは人間以外では初めてで、京都大の研究チームによると、鳴き声(単語)は20種類以上もあるそうだ▼翻って、人間はシジュウカラよりもはるかに膨大な言葉を操ることができる。特に日本語は平仮名、漢字、外来語を使うため語彙(ごい)が多く、一般的な国語辞典の収録単語数は約7万語にも上る▼今年も間もなく、小中学校や高校で入学式のピークを迎える。せっかくの能力を使わないのはもったいない。マスクで顔の半分が隠れて、表情が見えづらい時代だからこそ、言葉をつなぎ、コロナ禍を共に乗り越える仲間を増やしてほしい。(文)