2021年10月1日時点の総人口は、外国人も含めて1億2550万2千人と推計された。減少は11年連続となり、前年からの減少数は過去最大の64万4千人。東京都が26年ぶりにマイナスになるなど沖縄県を除いた都道府県で人口が減った。
減少のうち60万9千人は死亡数が出生数を上回る自然減、残りは海外からの入国より出国の方が多かった社会減だ。また21年の出生数は6年連続で過去最少を更新しており、自然減のペースを少しでも遅らせる方策が急務と言える。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(17年)によると、30年代後半からは年間100万人近い自然減が続く。現在の出生減の状況から、これらを上回る可能性がある。急激な人口減少を前提に政府、地方自治体は地域政策を考えることも重要だ。
政府は14年に「地方創生」を提唱し、出生率の向上によって人口減少に歯止めがかかるとの中長期展望を示した。だが「少産多死」の事態が加速しており、東京一極集中の是正と同様に、目標の達成は難しいと判断せざるを得ない。
岸田文雄首相は「デジタル田園都市国家構想」を掲げた。地方創生も引き継いだが、人口減少を正面からは捉えていない。デジタルの活用によって母子オンライン相談、母子健康手帳アプリの導入などの施策を例示するものの、出生数アップには直結しないだろう。
地方創生を受けて自治体は、将来の人口減少を推計し、先行きの厳しさは認識した。だが、施策を見ると、人工知能(AI)を使った婚活支援、保育の受け皿整備による待機児童ゼロなどで、出生数を見る限り成果はあまり上がっていない。
地方の人口減少に拍車をかけそうな事態も進んでいる。女性の東京一極集中である。21年の人口移動報告によると、東京圏への転入者は転出者を上回る「転入超過」で、その数を男女別で見ると男性は3万4359人に対し、女性は4万7340人だった。
女性の方が多く東京圏に転入する傾向は08年以降、目立っている。男女とも20歳前後で進学や就職のため転入することが一極集中の原因とされるが、別の視点から指摘したい。この顕著な男女差は、若い女性が「地方を選んでいない」結果と見るべきではないか。
働きたい会社が地方にあまりないこと、地域社会が男性中心であることから、若い女性が敬遠している。若い男女の数がアンバランスになれば未婚率のアップにもつながるだけに、自治体には早急な対応を求めたい。
例えば、大学卒業後、就職のため戻る女性が男性より少ないことに気付いた兵庫県豊岡市は21年に「ジェンダーギャップ解消戦略」をまとめた。女性にとってやりがいのある仕事、男女格差のない職場環境を経済界も含めた地域全体でつくり出そうとしている。選ばれるまちを目指す先進的な取り組みと評価したい。
人口減少が深刻化する中、広い範囲に人が住み続ければ道路や上下水道などの維持・更新コストが多くかかる。地球温暖化に伴い洪水や土砂崩れのリスクも高まっている。行政コストを低く抑えリスクを回避するため自治体は、安全な地域に人が集まって住む「コンパクトシティー」の考えを都市計画に盛り込むことも不可欠である。