当時の中曽根康弘首相が衆参同日選挙を狙って、いわゆる「死んだふり解散」に踏み切ったのは1986年の6月2日。結果は思惑通りに自民党が圧勝。第3次中曽根内閣の下で国鉄分割民営化関連法が成立した▼その解散の11日前、5月22日付の本紙に自民党の意見広告が載った。タイトルは「国鉄が…あなたの鉄道になります」。広告の文言には、不安を否定し民営化に期待させる言葉が並ぶ。「全国画一からローカル優先のサービスに徹します」「ローカル線(特定地方交通線以外)もなくなりません」▼特定地方交通線とは、80年の国鉄再建法に基づき1キロ当たり1日の輸送密度が4千人未満の路線のうち廃止対象になった線。4年前に廃止された三江線やJR西日本が今回、コロナ禍前の収支を示して俎上(そじょう)に載せた木次線などは入っていなかった▼36年前と今では確かに状況が違う。道路整備が進んでマイカー利用が増える一方、中山間地域では人口減少が進んだ。さらに予期せぬコロナ禍という事態も当面は収支に影響するだろう▼今更、当時の「約束」を守れと言っても仕方ないし、その話自体を知らない世代もいる。ただ与党の政治家には、そうした経緯を踏まえた上で、ローカル線問題の解決に取り組む先頭に立ってほしい。レールは都会と古里、中央と地方をつないでいるだけではない。沿線住民と政治家の間の信頼もつないでいる。(己)