悲壮感が今に伝わる。13年前に発刊された『石見ふるさと大百科』の高速道の項目。昭和30年代、当時の俵三九郎浜田市長が「高速道路時代が来る。乗り遅れては将来への発展は望めない」と説き、周辺市町村に同盟会結成を訴えた。後に浜田道が完成した▼発言直前の一文が切実で「昭和30年代の後半、県内は豪雪と水害に見舞われ過疎化が著しく進んだ」とある。過疎の主因は農業離れにあったが、牙をむく自然の脅威も人々を諦めさせた▼29日に江津市長と市議のダブル選が投開票される。争点の一つが江の川治水。2018、20、21年と夏に氾濫を繰り返し、地域の維持に暗い影を落とす▼特殊な川だ。流域最大都市は上流の広島県三次市(人口約5万人)で、河口の江津市(同約2万2千人)より大きい。下流になると開ける多くの川とは違う。まるでテニスラケットのような形だ。下流部より流域面積がはるかに大きい上流部はフレームで、三次盆地で集めた水をグリップの江津市へ送る。下流は幅がさほど広がらず平野もあまりない。個性が治水を難しくし、人口の多い上流部に比べ下流部は遅れた▼江の川は大地が隆起した後も負けず、周りを削り流れ続けた。先行河川と呼ばれる。それほどに豊かな水量と激しい水流。竜のごとしか。国は下流部の治水に、21年度から10年間で250億円を投じる。これも膨大。大河を御する難しさよ。(板)