消える前のろうそくの輝きを思わせるにぎわいだった。駐車場は満杯。懐かしの味を求める人たちでフードコートも満席状態。思い出を書き込む寄せ書きコーナーには感謝の言葉が並んだ▼松江市で、特に城西地区の市民に長年親しまれてきたショッピングセンター「キャスパル」(松江市黒田町)が閉店した。前身の「アピア」が開店したのは1981年11月。同じ橋北地域の殿町にあった一畑百貨店と並ぶ集客拠点としてにぎわった▼高級品は扱わなかったものの、衣料品から食品、台所用品、寝具、文房具、医薬品…。行けば生活用品がほぼ何でもそろい、加えて午後10時までの営業時間が周辺住民に重宝された。遠足や運動会など行事の前の晩になって足りない物が見つかり、店に走った人も多かった▼アピア時代、夏の毎週土曜日に開かれていた「土曜夜市」は、子どもたちはもちろん、大人も含め周辺住民の楽しみだった。カラオケ大会やビアガーデン、ヨーヨー、金魚すくいなど、毎週が夏祭りで楽しかった。わが家の子どもたちは夕方、合図の煙火が鳴ると「どよ、よいちだ」と大騒ぎ。連れて行けとねだられたものだ▼キャスパル閉店は時代の流れなのだろう。しかし、周辺住民にとって、歩いて買い物に行ける施設がまたなくなった。行政も市街地の空洞化を本気で考えるときだろう。跡地にまたぞろマンション建設とならぬよう願う。(富)