今の学校では少なくなったようだが、かつては授業中によく立たされた。宿題をしてこなかったり、校則を破ったりすると罰として与えられた。身に覚えのある人も多いのでは。社会に出て「まあ、どうぞ」と座ることを勧められると、相手に受け入れられているサイン。立つのは苦痛、座るのは楽というイメージを、大勢が持っているだろう▼立つか、座るか。人間の健康管理に当てはめると「座るのは楽だが、健康には悪い。立つのはその逆」と島根大で運動生理学を研究している原丈貴准教授は「座る害」を指摘する。原准教授によると、一日のうち座っている時間が長いほど寿命を縮め、糖尿病など生活習慣病を誘発しやすいという▼厚生労働省のホームページをのぞくと、日本人が座っている時間は、1日当たり平均7時間と世界主要20カ国で最長。家庭や学校、職場などを通じて座らざるは苦役とばかり「座位文化大国」となっている▼厄介なのは、ジョギングや筋トレなどの運動で座り過ぎを「相殺」できないこと。運動しようがしまいが、座った時間だけ健康リスクは大きくなるらしい▼スーパーなど生活に必要な施設が徒歩圏内にあることが座り過ぎを防ぐと同准教授。マイカーに頼らざるを得ない地方の生活の方が、大都市より座る時間が長くなりやすい。長引くコロナ禍のステイホーム作戦が、感染予防と生活習慣病の間で戸惑う。(前)