統合失調症を引き起こす原因の一つに胎児期の免疫障害が影響していることを、島根大医学部(出雲市塩冶町)の研究チームが動物実験で確認した。発症メカニズムの解明につながる成果として米国の学会誌電子版でこのほど発表した。
統合失調症は幻覚や妄想などの症状がある精神疾患。人種、地域を問わず人口の0・8%が発症するとされ、脳前部帯状回にある「ドーパミンD2受容体」に機能異常が起きることが報告されている。発症原因は遺伝やストレスなどが関係すると言われるが、詳しくは分かっていない。
原因の一つとして島根大医学部免疫精神神経学共同研究講座は、胎内にいる時に母親が強い感染症にかかるなどして免疫が活性化することで起きる場合がある、胎児期の免疫障害に着目。
実験で妊娠中のラットの免疫を人工的に活性化させ、生まれた子の脳内を陽電子放出断層撮影法(PET)で撮影。統合失調症患者のPET画像と比較した結果、統合失調症患者と同様、ドーパミンD2受容体に異常が見られた。
同講座の大西新特任教授(44)は「一つの原因が分かったことは、なぜ脳に異常が起きるのかを解明する大きな材料になる」と話した。発症メカニズムの解明、治療薬の開発に向けて研究を進める。
(平井優香)