おなかの子を一人で産み育てると決めた蛍に求婚した正吉は、そこら中に群生している黄色い花びらのオオハンゴンソウを花束にして贈り続けた。高くて買えないバラの代わりにと。流れる挿入曲は加藤登紀子さんが歌う「百万本のバラ」。ドラマ『北の国から ’98時代』の印象深い場面だ▼そんな正吉に教えてやりたい。「当時はまだよかったかもしれないが、今は駄目なんだ。オオハンゴンソウは特定外来生物に指定され、勝手な持ち運びが禁じられている」▼島根県内で近年、同じく特定外来種のオオキンケイギクが勢力を増しているという。黄色の花は今まさに盛り。松江市内でも土手沿いを鮮やかに染めているのを見つけた。北米原産で、もともと明治中期に観賞用や緑化用として持ち込まれ、いつしか野生化した。驚異的な繁殖力で在来の草花を駆逐する恐れがあるとは、きれいな見た目からはとても想像できない▼人間が身勝手なだけで花に罪はないと知りつつ、ここは心を鬼にして駆除するしかあるまい。ドラマの中で正吉がしていたように、鎌を使って刈り取るのでは不十分だそうだ。三瓶自然館サヒメルの担当者に教わった。根の一部でも土中に残っていれば、そこから再生するというから手ごわい▼根からごっそり抜き取り、枯らして焼却処分する。窓から見える景色が「百万本のオオキンケイギク」で埋め尽くされないように。(史)