巣箱の入り口で群れるミツバチ(資料)
巣箱の入り口で群れるミツバチ(資料)

 1匹のミツバチ(働き蜂)が一生に集める蜂蜜の量は小さなスプーンで1杯分、5グラム程度とされる。米国の行動生態学者の試算によると、ミツバチは1回平均25分飛行し、約500個の花を回る。450グラム入りの瓶には合計で1万7330回、延べ7220時間かけて約870万個の花を回った結果が詰まっているそうだ▼蜂蜜の瓶を見ても、あまり意識することはないが、実は大変な作業量の「恩恵」を頂いていることになる。食べ物に限らず、ほんの少しだけ想像力を働かせると、そのありがたさや難しさが見えてくる▼3年前に騒ぎになった2千万円必要とされる老後資金の問題も同様だ。コロナ騒ぎで忘れていたが、年金だけでは不足するから自己責任で準備するように、ということだった。この数字をはじいた中央の人たちは、地方で暮らす庶民の働き方や賃金実態を想像してみたのかと思う▼ミツバチの蜜集めと似た計算をしてみる。地方ではいい方の時給千円で1日8時間、365日休まずに働いて貰(もら)えるお金は年間292万円。2千万円稼ぐには一日も休まずに7年間働く必要がある。働き蜂顔負けの頑張りを求められる▼おまけに今は、年金自体が減額される中で食料品などの値上げラッシュが続く。「月100万円しかない」とぼやく政治家のような感覚ではなく、地方に住む働き蜂の苦労を少しは考えた老後設計にしてほしい。(己)