石見神楽として初となる東京・国立劇場での単独公演が31日にある。歌舞伎や文楽、舞踊といった伝統芸能がひしめく首都圏で有料公演を重ねた実績が認められ、つかんだ大舞台。関係者は石見神楽の名を全国にとどろかせようと意気込む。
「最高の舞台で本物の舞を見てほしい」。市などでつくる実行委員会で、副委員長を務める松原由美子さん(71)=千葉県在住、江津市出身=は力を込めた。
伝統芸能の殿堂である国立劇場で公演するには、有料公演の開催実績が求められる。松原さんは、浜田市内の社中の要望を受けて首都圏の知人に掛け合い、有料の東京公演を16年から4度実現。今回の初舞台につなげた立役者の一人だ。「東京で石見神楽を広く知ってもらうことが今後の発展につながる。伝統芸能の火は絶やさせない」と、やる気をみなぎらせる。
公演はもともと東京パラリンピックに合わせ、2020年8月を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止を余儀なくされた。待ちに待った舞台となるだけに団員たちの鼻息は荒い。
本番は旧浜田市内の団体でつくる浜田石見神楽社中連絡協議会の10社中・計68人が出演する。3月から月に1回集まって稽古を重ね、17日に市内であった最終リハーサルでは「塵輪(じんりん)」や、50頭を登場させる「大蛇(おろち)」の迫力の舞を披露した。
協議会の長冨幸男会長(76)は「東京は関西に比べ赴く機会が少なく、貴重な勉強になるはず。見る人を驚かせる良い舞をしたい」と力強く語った。
公演は午前と午後の2部構成で、6演目ずつ披露する。
(宮廻裕樹)