記者会見を開いた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長=11日、東京都内のホテル
記者会見を開いた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長=11日、東京都内のホテル

 安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに次々と指摘される自民党を中心にした保守政治家と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係。岸田文雄首相(自民党総裁)は予定を早めて党役員人事と内閣改造に踏み切ったが、これで騒ぎが収まるかどうか▼旧統一教会や関連する政治団体「国際勝共連合」の名前は島根県内の地方選挙でもかつては手堅い組織票として何度か耳にした。50票、100票でも当落を分ける可能性があったからだ。名称を変えたせいか、近年はあまり聞かなくなっていただけに、その浸透ぶりに驚く▼民主政治では、さまざまな団体や業界などが自らの主張を政治に反映させるために働き掛けを行うのを規制できない。しかも組織をつくったり、お金を出し合ったりしている以上は、端的に言えば「見返り」がないといけない▼引っかかるのは自民党保守派との政治理念の類似性だ。「国際勝共連合」は運動方針に(1)憲法改正の実現(2)防衛力強化(3)同性婚合法化や行き過ぎたLGBT人権運動の歯止め―を掲げる。自民党の政策に反映させようとしたのかどうか▼さらに当初の「こども庁」から「こども家庭庁」に変わった経緯も今となっては気になる。自民党内から出た「子どもの育ちは家庭が基盤」との意見は旧統一教会の関連団体がうたう「家庭力のある国」と符合する。「見返り」は何もなかったのだろうか。(己)