閣僚ら政務三役と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わり、新規感染者数が高止まりする新型コロナウイルス対策、生活を圧迫する物価高騰への対応―。国会で議論すべき課題は山積みになっている。
立憲民主党など野党は、憲法53条の規定に基づいて臨時国会の召集要求書を衆参両院の議長に提出した。だが、岸田政権は、9月27日に実施する安倍晋三元首相の国葬が終わった後の10月以降に臨時国会を召集する方針だという。それまでの約1カ月半以上も、国会は長い「夏休み」を取るつもりだろうか。
国会の役割は行政監視と立法だ。閣僚と旧統一教会との関係をただす行政監視や、新型コロナ対応を見直すのに必要ならば法改正を行うのは、まさに国会でなければ果たせない責務と言える。
岸田文雄首相は新型コロナに感染したため8月末からのアフリカ、中東訪問を中止した。早期召集に応じられない外国訪問という理由もなくなった。政府は早急に臨時国会を召集すべきだ。
岸田政権は参院選後の臨時国会をわずか3日間とし、参院の正副議長を選出するなどの手続きだけで、実質審議は全く行わなかった。その後は閉会中審査で対応するとしているが、散発的に開かれる閉会中審査で議論を深めるのは不可能だ。
53条は臨時国会について衆院か参院の「総議員の4分の1以上」の要求があれば「内閣は、その召集を決定しなければならない」と定めている。しかし、要求から召集までの日数の定めがないため、安倍、菅義偉両元政権は要求に応じなかった。国会軽視と言わざるを得ない。岸田首相は「聞く力」を掲げながら、その姿勢を継承するのか。
53条は少数派の意向を尊重するために定められている。少数意見にも配慮する民主政治の基礎とも言える規定だ。
裁判所もその趣旨をくんだ判断を示している。安倍政権が2017年に53条に基づく臨時国会の召集要求に約3カ月間応じなかったのは違憲だとして、野党議員らが損害賠償を求めた訴訟だ。
その判決で今年1~3月、賠償請求は退けたものの、広島高裁岡山支部は、召集要求に対して「内閣は合理的な期間内に召集する憲法上の義務があり、違憲と評価する余地がある」とした一審判決を支持。福岡高裁那覇支部は「国民の意見を少数派を含め反映させる観点からも、極めて重要な憲法上の要請だ」との判断を示している。
今、政治の課題となっているのはいずれも深刻なテーマだ。内閣改造で就任した大臣、副大臣、政務官の政務三役のうち少なくとも閣僚8人を含め30人に、霊感商法などで社会問題を起こした旧統一教会との接点があったことが判明している。
共同通信社のアンケートでは多くの自民党議員に旧統一教会と接点があった。自民党の政策が教団から影響を受けてきたのかを含め、国会できちんと検証すべきだ。自民党総裁である岸田首相には重い説明責任がある。
安倍元首相の国葬には反対意見も多く、法的根拠も問われている。新型コロナ対応では感染者の全数把握をやめる方向で検討されている。相次ぐ値上げにはどう対処するのか。今まさに国会で審議すべき課題だ。
臨時国会召集の「合理的な期間」は「早急に」だ。