決勝で下関国際を破って初優勝を果たし、喜ぶ仙台育英ナイン=22日、甲子園球場
決勝で下関国際を破って初優勝を果たし、喜ぶ仙台育英ナイン=22日、甲子園球場

 東北勢の初優勝で幕を閉じた夏の甲子園。悲願を果たした仙台育英(宮城)の初戦・鳥取商戦をテレビで観戦し、登板した5投手全員が最速140キロ超の直球を投げる姿に度肝を抜かれた▼仙台育英は総合力が際立っていた。下関国際(山口)との決勝で満塁本塁打を放った岩崎生弥選手、先発で好投した斎藤蓉投手は宮城大会でベンチ外や出場なし。甲子園までの紅白戦で活躍し、勢いを大舞台の躍動につなげた▼選手層が厚いといえばそれまでだが、自らの出番を信じて準備を怠らなかった選手が輝いた。高校時代に選手を諦め、学生コーチに就いた須江航監督(39)だから目をかけられた面もあろう。まさに全員野球。絶対的エースや主砲頼みでは勝ち抜けない高校野球の転換点を見た▼今後主流となりそうな戦い方は、山陰両県の控え部員にも励みになったのではないか。今回ほど控えに着目した大会はなかった。浜田も苦しんだ新型コロナウイルス禍で、選手を入れ替え臨むチームも目立った。データ班の分析で強豪を倒した学校もあった。部員一人一人の役割が重みを増す▼その戦いぶりには人口減少社会を生き抜くヒントが隠されている。人手不足が相まって地域も会社も一人一人の役割は以前にも増して大きく、重責が回ってくる好機も多い。地域社会では誰もがレギュラー選手だ。皆が与えられた役割を全うした先に維持、発展が見えてくる。(吏)