岡山県と米子市をつなぐ米子道(延長66・5キロ)が12月、全線開通から30周年を迎える。1992年当時の本紙をめくると、もともとは93年春の完成が見込まれたが、「だいせん国体」前の開通を鳥取県が強く求めたことで前倒しされ、冬場の完成になったそうだ。陰陽の人の流れと物流を支える大動脈は今年、全線4車線化のめどもついた
その米子道には幻の終点が存在する。半世紀前の「予定路線」の指定段階では境港市までつながることになっていた。だが、米子-境港間の整備は置き去りにされ、境港は日本海側の重点港湾で最も高速道路へのアクセスが悪いまま。法令上は今も終点は境港市と定められており、早期事業化を求める声は根強い
幹線道路を重視する鳥取県、生活道路を重視する島根県-。過去に鳥取県出身の先輩からこんなイメージを聞いたことがある。実際、米子の市街地は複数の4車線道路が東西南北を貫き、ほぼ全線がつながった鳥取県内の山陰道は料金所を通過することなく快適に走行できる
一方、島根県内の山陰道は今もぶつ切りの状態が続き、開通区間も有料と無料の区間が混在する走りにくさは相変わらずだ
「まだら模様」の高速道路は限られた予算の中で整備を急いだ先人の努力の跡ともとれるが、歴年の道路政策の迷走の象徴にも映る。県境を越えると状況が一変する山陰道を走るたび複雑な思いが募る。
(文)