毎日発表される新型コロナウイルスの新規感染者数に驚かなくなった。第7波に入って桁違いに急増したことで慣れてしまったようだ。山陰両県ともに千人前後、全国で20万人台と聞いても特に意識することはなくなった。国は全数把握を見直すらしい▼テレビに登場する専門家やコメンテーターも大半が「感染対策と社会経済活動との両立」を唱える。年明けからの第6波に比べると、第7波は「重症化率が低い」とされていることに加え、そんな感覚のまひもあるのかもしれない▼以前は新規感染者数の予測グラフを示し、行動制限をすれば山のピークを低く、なだらかにできると強調していたはず。今更遅いが、第7波はなぜ山を低くしようとしなかったのかと思う▼数字を確かめてみると、ロシアがウクライナに侵攻してからの半年間に、国内でコロナのために亡くなった人は1万5千人を超え、これまでの死者全体の約4割を占める。昨年の交通事故の死者2636人、自殺者数2万1007人と比べて少ないとは言えない。山陰両県でも半年で計100人近くになる▼重症化率や致死率は多少低くても、分母となる感染者数が倍増すれば当然、死者の絶対数は後から増える。それを承知で社会経済活動との両立を目指すのは「全体の利益のためには多少の犠牲はやむを得ない」という発想なのだろうか。1万5千人超の「命の重さ」を考える。(己)