小中学校時代の部活動で平日の放課後や休日に面倒を見てくれる顧問の先生に対し、「家庭は大丈夫なのか」「プライベートはあるのか」などと心配したことは一度もなかった▼指導してもらった時間の多くが「サービス残業」だったことを改めて思うと、原動力は子どもたちを導きたいという熱意や使命感以外の何物でもなかっただろう。指導方法を巡って理不尽な点がなくはなかったが、今振り返ると、頭が下がる思いだ▼文部科学省の有識者会議が6月、運動部活動の地域移行に関する提言をまとめ、休日から段階的に移す改革の方向性を示した。教員に代わり誰が指導やチーム運営を担うか。保護者の費用負担はどうなるのか。課題は明確だが、まず校区や市町村単位で担い手を確保できるかが大変心もとない▼これまでの部活動指導にかかる教員の働きぶりを賃金に換算するとどのくらいになるか、「見える化」する方法はないだろうか。そこを明確にした上で、財源確保が求められる▼移行への道のりは決して平たんではないものの、地域に新たななりわいを生む好機でもある。前向きな議論を始める市町村が山陰両県で一つでも多く現れてほしい。2030年には、島根県で2度目の国民スポーツ大会が開かれる。部活動の地域移行によって生まれた新たな指導者たちが国スポでも活躍し、子どもたちのヒーローやヒロインになる夢を見る。(万)