ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が首脳会談を行い、米国への対抗軸として両国関係を強化する姿勢をいっそう鮮明に打ち出した。
ウクライナ侵略で多くの犠牲者を出し続けるロシアに対し、中国は批判と制裁を控えている。国連安全保障理事会の常任理事国である両国は「武力による威嚇または武力の行使」を禁じる国連憲章を守り、国際社会の指導的大国として責任を果たさねばならない。
ウズベキスタンのサマルカンドで首脳会議を開いた上海協力機構は、核開発疑惑で米国の制裁下にあるイランを正式に受け入れる方針を決定。ウクライナ危機は核兵器を大量に保有する国同士が対立する恐怖を世界に知らしめた。米国を仮想敵国とみなす中ロが、イランなどを巻き込み「枢軸」を形成する構図は、冷戦終結後の世界を再び二つの陣営に分割し、核戦争の火種を再燃させる危険をはらむ。
プーチン氏は習氏との会談冒頭で「モスクワと北京が組む外交のタンデム(双頭体制)は、世界や地域の安定に決定的な役割を果たせる」と述べた。「一つの中国」という原則を支持し、台湾海峡を巡る米国と「衛星国家群」の「挑発」を批判した。
習氏は、ロシアとともに「責任ある大国として模範」を示したいと応じた。プーチン氏は、中国が主導しインドも参加する上海協力機構の加盟国が有する人口は「地球の人口のほぼ半分」を占めると誇った。
世界を欧米の先進国が主導する時代は終わった。両首脳の発言からは、そのような自負がうかがえる。確かに世界は多極化し流動化している。米国の権威は衰退傾向が止まらない。だが核兵器の使用をちらつかせ、武力で領土の拡張を図る暴挙を認めれば、2回の世界大戦を経て培った国際秩序が根本から崩壊する。
第2次世界大戦の反省の上に成立した国連は、安保理でのロシアによる拒否権行使で機能不全が著しい。平和の番人であるべき常任理事国が、価値観をめぐり二つに分裂している。侵略行為に様子見を決め込む加盟国も多い。粘り強く改革の声を上げ続けねばならない。
制裁下にあるプーチン政権は石油や天然ガスの中国への輸出を大幅に増やすことで、戦費をまかなっている。ウクライナ侵略は経済面で中ロの絆を強めた。中国は資源を安く買える利益を享受している。だがロシアによるウクライナ侵略に、もろ手を挙げて賛成しているわけではない。
プーチン氏は会談冒頭、ウクライナ情勢に関して「貴国が抱く懸念」に言及した。習氏は冒頭発言でウクライナ問題に触れなかった。有力な貿易相手であったウクライナを失い、世界経済が収縮する現状は中国にも決して好ましくないはずだ。
ウクライナ危機は欧米の支援を受けたウクライナ軍が反撃し、一部ながら奪われた領土を回復しつつある。今最も懸念されるのは、プーチン氏が次第に追い詰められ、化学兵器や小型核を使用する事態である。
中国が本当に「大国の模範」であろうとするのなら、ロシアの暴走を止める責任がある。ウクライナ侵攻で誤算を犯したプーチン氏は政治的にも経済的にも、中国に依存しなければ立ち行かない状況にある。彼を説得できる人物は習氏以外に見当たらない。