きょうは彼岸の入り。彼岸とは春分の日と秋分の日を中日とする7日間のことをいい、墓参りをする習わしがある。「国民の祝日に関する法律」は、春分の日を「自然をたたえ、生物をいつくしむ」とする一方、秋分の日は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」とする▼この心情につけ込むのが今、取り沙汰されている霊感商法だ。優しい顔をして近づいては「ご先祖さまが苦しんでいる」などと不安をあおり、法外な値の品物を売りつける。悪徳商法の一種。利用するのはご先祖さまだけではない。「悪霊がついている」「これを持っていれば運が開ける」…。手口も手を染める団体もさまざまだ▼大型店の一角に出店する無料の姓名判断を興味本位で受けたことがある。連れに対し「名前の字画がよくない」と言いながら、店の男が机の下から出してきたのが高価な開運印鑑だった。ほぼ同時に席を立ったのは言うまでもない。もう30年くらい前の話▼彼岸という言葉は仏教で向こう側、つまり「悟りの境地」を指す。それに対する言葉は此(し)岸(がん)といい、こちら側、「この世」のこと。向こう側があるかどうかを確かめるすべはないが、こちら側は、いつまでたっても問題が絶えない悩み多き世である▼今、多くの人の悲願といえば新型コロナウイルス禍の収束とウクライナ戦争の終結だろう。彼岸の中日には先祖をしのぶとともに、祈りたい。(輔)