本紙で連載した企画「Ai 死因に迫る」の初回記事
本紙で連載した企画「Ai 死因に迫る」の初回記事

 世の中には、防げたはずの死が無数に存在する。その代表例が、計21人が死亡したパロマ工業製のガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故。1985年から20年間にわたって問題が放置され、悲劇が繰り返された▼例えば北海道のケース。アパートの浴室で男性が亡くなり、警察によって急性心不全と判断された。湯沸かし器の不具合を疑った遺族は再捜査を求めたものの応じてもらえず、その後、同じ部屋に入居した男女2人も命を落とした。男性の死因がきちんと究明されていれば、中毒死の連鎖は防げたはずだった▼本紙で連載した『Ai 死因に迫る』は、鳥取大医学部の飯野守男教授らによる死亡時画像診断(Ai)を活用した死因究明の現場を取り上げた。Aiは運び込まれた遺体のCT画像を基に死因を解明する手法で、遺体を傷つけず、短時間で調べられる▼正確な死因が分かれば遺族は納得でき、地域社会は類似の事故死や病死の予防に生かすことができる。犯罪の見逃しや保険金の支給ミスの防止にもつながる。死因究明は今を生きる私たちのためにも欠かせない▼飯野教授は「防げる死」を防ぐため、不自然に亡くなった全ての遺体のAi実施を提言する。相応の予算措置が必要だが対象数が膨大な都会地と違い、人口最少の鳥取県ならば全国に先駆けて実現できる可能性がある。県民の命を守る県独自の仕組みづくりを求めたい。(文)