ことわざには、全く異質なものを二つ並べ、共通点を見つけて結び付ける言い方がある。おなじみの「男心と秋の空」あるいは「女心と秋の空」もそうだ▼秋になると太平洋高気圧が弱まり、低気圧や移動性高気圧が短い周期で通過するため天気が変わりやすい。時には今週初めのように台風も来る。そんな天気と同様、人の心も移ろいやすいようだ▼このことわざ、もともとは「男心-」の方が先だったといい、『日本故事物語』(池田弥三郎著)によると、良く言えば女性への注意喚起や慰め、見方を変えれば男の身勝手が言わせた面があるらしい▼ちなみに自宅にある1991年発刊の『広辞苑』第4版には「男心-」の例文だけが載っているが、職場で使っている98年発刊の第5版では両方の例文を掲載。それぞれ<後に「女心と秋の空」とも><古くは「男心と秋の空」>との説明が添えてある。このため「女心-」という言い方が一般に広く浸透したのは90年代後半と言えなくはない▼さて、秋風とともに人の心の変わりやすさが身に染みているのは岸田文雄首相も同じだろう。7月の参院選で圧勝したのに、立秋を過ぎた頃からどうも雲行きが怪しくなった。自民党議員と旧統一教会の関係が問題になる中での内閣改造や、安倍晋三元首相の国葬を珍しく速断したのが裏目に出て支持率が急降下。お気の毒に「墓穴を掘る」感じになった。(己)