北朝鮮による弾道ミサイル発射が相次いでいる。4日には日本上空を通過し、Jアラート(全国瞬時警報システム)が北海道などに発信された。今後、山陰両県の上空を通過する可能性はあるのか。万が一、飛んできたらどんな行動すればいいのか。読者の疑問を基に取材を進めた。 (報道部・古瀬弘治)
「ミサイルは島根には飛んでこないの? 飛んできたらどうしたらいいの?」
松江市内に住む70代女性から質問が寄せられた。
4日朝、青森県の上空を通過した北朝鮮のミサイルはグアム周辺に着弾した。日本国内に影響はなかったが、島根、鳥取両県上空が軌道の一部に入る可能性もあるのではないかと、不安に思う気持ちはもっともだ。
ミサイルが日本海に着弾したこともある。私たちが住む地域に飛んでくることはないのか。
▼誤差は100メートル
まず、北朝鮮がミサイルを発射する狙いとは何か。
島根県立大総合政策学部の福原裕二教授(51)=朝鮮半島地域研究=は「米韓の軍事的なことへの反応」とする。実際、9月26日に始まった米韓合同軍事演習の近辺に数度のミサイルが発射された。
短距離と長距離のミサイルでは狙いは異なり、過去最高の4600キロ飛翔(ひしょう)した今回のミサイルは「米国に技術を誇示することによる抑止、けん制だった」と解説する。
両県に飛んでくる可能性については「北朝鮮の短距離ミサイルの誤差は100メートルほど。狙わなければ地上に着弾する可能性はなく、現状からみれば両県に何らかの被害がある事態は考えられない」とする。
▼遅いJアラート
一方、福原教授は情勢の変化やミサイルの種類などによっては、日本の地上に着弾し被害が出る可能性はゼロではなく、国の備えは必要とも指摘する。
ミサイルが飛んできたらどうするか。今回、北海道などに発信されたJアラートは「建物、または地下に避難してください」と呼びかけたが、具体的にはどこか。
内閣官房はミサイル攻撃など何らかの攻撃があった場合に避難する「避難施設」を公表。このうちコンクリート造りや地下施設の「緊急一時避難施設」も公表している。
両県によると、島根では868施設(緊急一時避難施設601施設)、鳥取では579施設(同288施設)を指定するが、地下施設で24時間対応可能なのは、島根で益田市役所の1カ所のみ、鳥取でも県庁地下駐車場と鳥取駅北口地下道の2カ所にとどまる。
韓国の避難訓練を視察した経験を持つ防災の専門家で、防災システム研究所(東京都)の山村武彦所長(79)は「Jアラートの発信は遅く、対象範囲も広く『本気度』が低い」とし、検証と改善を促す。
その上で、Jアラートを屋外で聞いた場合には、近くのコンクリート造りの建物に避難する▽近くに何もなければ、身を低くし頭や目、耳を守る▽車は降りて、遮へい物に身を隠すこと-などが必要だという。屋内の場合には、窓から離れるなど対策を示す。
ただ、ミサイル発射後、着弾や通過までは数分しかなく、Jアラートを聞いてから行動できる時間はさらに短い。居住地以外や旅行先で発射情報を受けることはあるため、その時どうするか、頭の隅に置いておくとよいのかもしれない。