北朝鮮の弾道ミサイル発射を伝える街頭テレビ=18日午前、東京・有楽町
北朝鮮の弾道ミサイル発射を伝える街頭テレビ=18日午前、東京・有楽町

 北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の弾道ミサイルを発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。

 北朝鮮は9月以降、弾道ミサイルの発射を繰り返し、10月には1発が青森県上空を通過している。日本は米国のほか、中韓とも連携を深め、地域の緊張を高める軍事的挑発を許さないという国際社会のメッセージを示す必要がある。

 今月13日の日米韓首脳会談では、米国が日韓への拡大抑止強化を表明したほか、北朝鮮が核実験を強行すれば「国際社会の強力で断固とした対応に直面することになる」と警告した。これに対し、北朝鮮の崔善姫(チェソンヒ)外相は「われわれの軍事的対応は一層猛烈になる」との談話を発表し、3カ国をけん制した。

 北朝鮮は、朝鮮労働党の金(キム)正(ジョン)恩(ウン)総書記が昨年1月に策定した「国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画」に従い、核やミサイルの開発を進めてきた。

 米全土を射程に収めるICBMだけではなく、戦術核を搭載できる短距離弾道ミサイルの性能も向上させることで、日米韓の軍事的圧力に対抗する姿勢を誇示している。

 3月に続いて再び日本のEEZ内に着弾させた今回の発射からは、北朝鮮が脅威のレベルを確実に上げてきていることがうかがえる。北朝鮮は7回目となる核実験の準備を終えたとされており、いつ実施に踏み切ってもおかしくない状況だ。

 こうした中で、まず求められているのは日韓の連携を強化することだ。日韓は隣り合う民主国家であるというだけではなく、北朝鮮と地理的に近い距離で向き合うという共通点がある。

 だが、日本は元徴用工訴訟問題を理由に、韓国側が解決策を示すまで首脳会談を行わないとの方針をとってきた。北朝鮮に対し日米韓が結束を強調しても、日韓の関係が良好でなければ足元は揺らぐ。

 岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は、カンボジアで約3年ぶりとなる正式会談を行った。関係の改善を見据え、首脳間でも意思疎通を継続すると確認したが、北朝鮮が軍事的挑発を強める現状を前に、その真価が問われている。

 また、北朝鮮にとって最大の後ろ盾である中国の責任も大きい。北朝鮮は中国共産党大会の開催中は核実験を控えていたとも伝えられており、北朝鮮が地域の軍事的緊張を高めないよう、影響力を発揮することが求められる。

 岸田首相は、中国の習近平国家主席とも約3年ぶりとなる日中首脳の直接会談を行った。権力基盤を固めた習氏との間で、建設的で安定的な関係構築に向け、首脳を含むあらゆるレベルで緊密に意思疎通を図っていくとの認識を共有している。

 日本が北朝鮮に強い影響力を持つ中国に対し、軍事的挑発をやめるよう促すことを求めるのは当然のことだ。同時に、中国もそれに対応しなければ、「建設的で安定的な関係構築」が空文化するのも明らかだ。

 ウクライナ侵攻を巡って国際社会がロシアに対して一致した対応をとれないでいるのを横目に、北朝鮮は軍事的な脅威の度合いを高めている。

 みすみすと7回目の核実験を許してしまう前に、国際社会が協調して北朝鮮に向き合い、地域の安定化を図ることが急務だ。