国内旅行を促す全国旅行支援の開始と、新型コロナウイルス水際対策の大幅緩和から1カ月を迎えた東京・浅草の仲見世通り。新型コロナの流行「第8波」が懸念されている=11日午後
国内旅行を促す全国旅行支援の開始と、新型コロナウイルス水際対策の大幅緩和から1カ月を迎えた東京・浅草の仲見世通り。新型コロナの流行「第8波」が懸念されている=11日午後

 新型コロナウイルスの新規感染者数が全国的に拡大し流行「第8波」に入った可能性がある。今夏の第7波を超える過去最大規模となり、季節性インフルエンザとの同時流行になる懸念もある。

 水際対策の大幅緩和と全国旅行支援で秋の行楽地は国内外の観光客でにぎわう。人の交流、移動が増える年末年始も近い。このままでは深刻化しかねない。第7波ピークでも新規感染者数は1日当たり26万人だったが、政府は最大でコロナ患者が45万人、インフルエンザ患者が30万人発生すると想定する。

 第8波に向け政府は「医療非常事態宣言」を発令して出勤の大幅抑制、帰省や旅行の自粛を求めるなど2段階の対応強化策を決定した。これも活用し早急に医療逼迫(ひっぱく)回避へ態勢を整えてほしい。

 そんな中、地域の中核病院に病床確保を義務付ける感染症法などの改正案が今国会で成立する見通しだ。病院が都道府県と事前協定を結び、違反した場合に病院名公表や減収につながる「罰則」を科す。だが過去に難航してきた病床確保がペナルティーによる強制で一気に進むかは疑問だ。

 改正案は、以前のコロナ流行で感染者急増に病床確保が追いつかなかった反省を踏まえた。自治体が設置した病院や国立病院といった公立・公的病院、高度医療を提供する大学病院など「特定機能病院」、診療所と連携する「地域医療支援病院」に対し、流行時の病床確保などを義務付ける。

 その際に都道府県と病院が事前協定を結ぶ仕組みを導入。締結した場合、病院が協定を守らないと特定機能病院などの承認を取り消されて診療報酬の優遇が受けられなくなるペナルティーもある。ただ病院側が協定を結ぶか否かは任意のため、実際にどこまで協力を得られるかは見通せない。一般の診療所などには病床確保を義務付けない。

 昨年にも、正当な理由なく病床確保などを拒んだ医療機関名を公表できるよう感染症法が改正された。しかし第5波では、都道府県が確保した病床のうち実際に使われたのは50~60%で、入院できず自宅で亡くなる人も出た。これを受け、行政権限を強化するのが今回の狙いだが、8割を占める民間病院の設備、人材配置にそもそも限界があれば、無理強いしても目に見える改善は難しい。

 まずは今ある医療資源を効率的に最大限活用すべきだ。医療機関への受診は、重症化リスクが高い高齢者や基礎疾患がある人、妊婦や小学生以下の子どもを優先。重症化しにくい若者らは健康フォローアップセンターの管理下で自宅療養することに協力したい。中核病院の対応能力拡大のため後方支援医療機関の役割をさらに強化すべきだ。

 コロナ医療提供に応じた病院などの収支が悪化した場合は国が財政措置を講じることを柱とする日本維新の会、立憲民主党共同提出の対案も、強制ではなく支援により医療現場を強化する点で参考になるだろう。

 国内の1日当たりの新規感染者数は9月以来の10万人超を記録するようになった。日本の週間感染者数は、第7波当時以来の世界最多の状況に10月末から戻ってしまった。だが、オミクロン株対応の新ワクチンの接種率はまだ十数%と伸び悩む。医療体制強化と併せ、ワクチンは引き続きコロナ対策の柱であることを再確認したい。