鳥取市の白兎神社近くの参道に並ぶ、うさぎの石像
鳥取市の白兎神社近くの参道に並ぶ、うさぎの石像

 <兎(うさぎ)追いし彼(か)の山…>で始まる唱歌『ふるさと』を元日の小欄で紹介した。またか、と叱られそうだが、松が明けぬうちに、今年の干支(えと)である「うさぎ」にまつわる言葉で、もう少しお付き合いを▼唱歌の歌い出しにあるように、うさぎは追われる印象が強い。サメをだまし向こう岸に渡ったものの、うそがばれ、怒るサメに追われて皮を剥ぎ取られた因幡の白兎もそう。≪二兎を追う者は一兎をも得ず≫ということわざもある▼簡単に得られないのは、うさぎの足が速いから。≪脱兎(だっと)の勢い≫は、逃げるうさぎのように極めて敏速な様子を指す。それができるのも、長い耳でいち早く周囲の情報をつかんでいるからか。≪兎耳(うさぎみみ)≫は「地獄耳」と同様な意味合いで、人の隠し事を聞き出すことをいう▼一方で悪い印象の言葉も。≪うさぎのひり放し≫は仕事の後始末をつけないことを指すらしい。うさぎは糞(ふん)をしてもそのままで後始末をしないという生態に由来するようだが、そんなきれい好きな動物がどこにいるだろう▼ここまで書いて、ふと気付いた。これらの言葉は自らの戒めになると。あれこれ目移りせずに一つのことに集中し、どんなに仕事に追われていても、脱兎のようには逃げず立ち向かう。耳の代わりに感度を高くして情報をつかみ、きっちりと仕事の後始末はつける。それができれば苦労はないが…。兎(と)にも角(かく)にも卯(う)年の目標にしたい。(健)