今年の干支(えと)で運気を呼ぶといわれる「卯(う)」にちなんだ神社や和菓子など、縁起が良い話題が元日から続いている▼当方にとって忘れ難いのは、島根半島の西端に近い出雲市大社町鵜峠(うど)の大宮神社だ。3日付本紙には、伝統行事「シャギリ舞」の舞台として登場。集落内を通る県道から急階段で上がった高台に社殿がある。拝殿のしめ縄の上に飾られた「波うさぎ」の彫刻が目を引く▼琵琶湖に浮かぶ竹生(ちくぶ)島への参詣をうたった謡曲にある「緑樹影沈んで魚木に登る気色あり 月海上に浮かんでは兎も波を奔(はし)るか 面白の島の景色や」を起源とする「竹生島文様」に似ているが、由来は定かでない。いずれにしろ古事記に出てくる因幡の兎(うさぎ)も思い起こさせ、心が揺さぶられる場所である▼この神社に祭られているのは、イザナミが朝霧に向かって吹いた息から生まれたとされる「シナツヒコカミ(級長津彦神)」「シナツヒメカミ(級長津姫神)」。風をつかさどる神だ。神社は眼下の日本海を通る船の安全を祈願するため建てられたとみられる。島根県内の神社に祭られる神様を紹介した『島根の神々』(島根県神社庁)を見ると、風神が主祭神の神社は少ないようだ▼きょうは大学入学共通テストの2日目。初日に追い風に乗った受験生は運気が続くよう、そしていまひとつだった生徒は良い風をつかめるよう、希有(けう)なパワースポットから願掛けをする。(万)