隠岐の海(奥)が寄り切りで石浦を破り、「山陰対決」を制した=2017年3月
隠岐の海(奥)が寄り切りで石浦を破り、「山陰対決」を制した=2017年3月

 山陰の相撲ファンにとっては、待ちに待った一番だった。2017年の大相撲春場所13日目。島根県隠岐の島町出身の隠岐の海と、鳥取市出身の石浦が初めて顔を合わせた▼幕内で山陰両県出身力士が対戦するのは大正以降では初めて。それもそのはず。新入幕は10年3月の隠岐の海が島根出身88年ぶりで、16年11月の石浦も鳥取出身53年ぶり。歴史的な取組は、三役経験者の隠岐の海が、低い体勢で懐に入る石浦の右上手を取って寄り切り、先輩の意地を見せた▼2人の対戦は隠岐の海が7勝2敗でリードする。ただ昨年春場所を最後に途絶えた。この場所で石浦が首を痛め、その後休場が続くため。そして隠岐の海が現役引退を表明。この取組は二度と見ることはなくなった▼189センチの長身と懐の深さを生かしたスケールの大きな相撲が魅力で、大器と呼ばれた隠岐の海も37歳。幕内優勝の好機もあったが、苦手とする同い年の横綱白鵬(現宮城野親方)が壁になった▼今場所、隠岐の海と入れ替わるように角界をにぎわしているのが、その宮城野部屋に所属する倉吉市出身の19歳落合。鳥取城北高で2度も高校横綱に、昨年の実業団横綱にも輝き、幕下15枚目格付け出しでデビュー。史上初の所要1場所での十両昇進を狙う。年寄「君ケ浜」として後進の指導に当たる隠岐の海には、落合と幕内で山陰対決を繰り広げる島根出身力士を育ててほしい。(健)