出雲市の東小学校と檜山小学校を統合し、新設された朝陽小学校の開校式で決意を述べる児童代表=2021年4月、同市園町
出雲市の東小学校と檜山小学校を統合し、新設された朝陽小学校の開校式で決意を述べる児童代表=2021年4月、同市園町

 「世界は終わる、メソメソと。ドカンとではなく」とは、フランスの詩人アンリ・ミショー(1899~1984年)の言葉。物事の終わりは誰にでも分かる形でいきなり訪れるのではなく、徐々に取り返しのつかない常態になっていく「ゆでガエル」の理論に似ている▼昨年5月からこれまでに計5回、本紙で掲載した企画「データと山陰」は、人口減に端を発した問題について統計をひもときながら解説している。元日付の紙面では統廃合が進む島根県の小学校数の推移を取り上げた▼現実はショッキングだ。ベビーブームを受けて1957年に454校あったのが、現在は200校を切った。平成の大合併に合わせた学校統合は一段落したかにみえたが、大田市や安来市など地域の学校の在り方の議論が今後本格化する自治体もある▼子どもの数が減り、効率的な教育行政を進めるには統廃合は避けられないのか。島根大教育学部の作野広和教授は「児童数が多くなれば教育が良くなるというのは幻想」「全ての学校を残すところから議論を始めるべきだ」と地域の奮起を促す▼少子高齢化や東京一極集中など、私たちは現実に合わせて地域の形が変わっていくことを、「仕方がない」と受け入れ過ぎてはいないか。地域が変わることを望まないなら、現実を変える気概が必要だ。漬かっていた水が熱湯になってからでは、鳴くこともできなくなる。(直)