<彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず>。相手の実情を知り自軍の実態を知れば100回戦っても危ういことはないとの意味。春秋時代呉の兵法家・孫武(孫子)の著述とされる『孫子』の言葉だ。情報分析と準備の大切さを説く。孫子の生きた時代から約2500年たった今でも注目され、ビジネスやスポーツの指針になっている▼まさに孫子の思想を体現した成果ではないか。島根県奥出雲町の横田高校男子ホッケー部が14年ぶりに全国大会3冠を達成した。最初のインターハイを制した際、選手は「目標は3冠」と明言。単独は逃したものの、国体優勝で2冠目を得た▼3冠を目前にした昨年12月の選抜大会決勝は、ゴールキーパーと1対1で対峙(たいじ)するSO(シュートアウト)戦にもつれ込んだ。メンタルトレーナーの指導も受けていたというSO戦への絶対の自信が選手を後押しする。フェイントやドリブルで翻弄(ほんろう)。5人全員がシュートを決め、優勝を手にした▼3大会全てを制するのは、並大抵のことではない。有言実行の快挙は、チーム力の正確な分析と練習による準備のたまものだろう▼1982年のくにびき国体を契機に始まった奥出雲町のホッケーの歴史。横田高卒業生は日本代表として東京五輪に出場するなど、活躍の場は国境を越える。高校3冠や世界の舞台を目標とする子どもたちが「ホッケーの町」から続くことを、願ってやまない。(目)