江戸時代を代表する浮世絵師・葛飾北斎の画業を紹介する企画展「永田コレクションの全貌公開<一章>北斎-『春朗期』『宗理(そうり)期』編」が3日、松江市袖師町の島根県立美術館で開幕した。同県津和野町出身の葛飾北斎研究者・永田生慈氏(1951~2018年)が、島根県に寄贈した「永田コレクション」のうち、若き日の北斎に焦点を当てた初の大規模展となる。前後期で計350点を展示する。前期は27日まで。後期は3月1日から26日まで。
永田コレクションは、永田氏の要望により県外不出となっている。同館は2026年度までにコレクションを3回に分けて公開。北斎が名乗った主な六つの画号から2期ずつ展覧会を開催する。
今回の「春朗」「宗理」期は1778~1805年ごろの20歳から45歳ごろに描かれた初期の貴重な肉筆画18点や浮世絵版画を並べる。「春朗期」は70点、「宗理期」は148点を公開。前後期で作品を入れ替え、肉筆画は通期で鑑賞できる。
開幕した前期展では、ともに世界で2点しかない春朗期の大判美人画「花くらへ 弥生の雛形(ひながた)」と宗理期の摺物(すりもの)「亀」が来場者の注目を集める。
20歳から35歳ごろまでの春朗期は、さまざま流派を取り入れ、試行錯誤しながら独自の作風を模索。19歳で役者似顔絵の第一人者、勝川春章に学びながら美人画や武者絵、黄表紙の挿絵などを描いたとされる。
35歳から45歳ごろの宗理期では、琳派(りんぱ)の流れをくむ俵屋宗理を襲名し、摺物や狂歌本の挿絵などに挑戦。上品で叙情性のある作風で人気を得た。
夫婦で訪れた福井京子さん(64)=鳥取市幸町=は「子どもが遊んでいる絵は当時の庶民の生活が想像できて楽しい。若いころの作風の変遷がよく分かった」と話した。 (井上雅子)