高波被害で損傷したJR日高線の線路=2016年12月、北海道新冠町
高波被害で損傷したJR日高線の線路=2016年12月、北海道新冠町

 2021年4月で一部廃止になったJR北海道日高線をテーマにしたドキュメンタリー映画『日高線と生きる』が先日、雲南市木次町のチェリヴァホールで上映された。JR西日本から赤字ローカル路線として〝名指し〟される木次線のお膝元。主催した同市の第三セクター・キラキラ雲南の思いが伝わってきた▼日高線は、米子市出身の作詞家・岡本おさみさんの代表曲『襟裳岬』の手前まで北海道南部の太平洋沿いをつないだ。15年1月、高波で土砂が流失。線路が宙に浮いた状態になり、運休を余儀なくされた▼映画は、復旧へ向け動いたものの、廃止へと議論が転換する経緯が関係者の証言で描かれる。莫大(ばくだい)な費用と復旧後の利用者確保がネックとなり、被災後、列車が走ることなく廃止となった▼木次線と備後落合駅(広島県庄原市)で合流する芸備線も18年の西日本豪雨で被災した。復旧はしたが、周辺は利用者確保にあえぐ。1日に広島県などがJR西へ聞き取りを実施。地域に必要な交通体系について議論を進めたいJR側と沿線自治体との議論は平行線をたどる▼「簡単に諦めないで」。映画では最後まで廃止に反対した沿線首長が訴えていた。人口減少の中、企業利益の追求と住民の利便性確保の両立は容易ではない。終映後、約50人の観賞者のうち木次駅へ向かったのはわずか。ローカル線の未来には、住民の意識変化も欠かせない。(目)