太陽の一番外側を回る太陽系第9惑星として冥王星が見つかったのは1930年のきょうのこと。以来、内側の水星から順番に「水(すい)金(きん)地(ち)火(か)木(もく)土天(どってん)海(かい)冥(めい)」と惑星の並びを覚えた人も多いはずだが、今は「冥」は入らない。冥王星は2006年、「準惑星」に分類されたからだ▼冥王とは冥界の王を意味する。冥界とは死後の世界。冥土、冥府、黄泉(よみ)の国である。冥王星は英語でプルートーという。惑星にはローマ、ギリシャ神話の神の名が当てられ、第9惑星は死後の世界の神の名が付いた▼このプルートーにちなみ命名された放射性元素が原子番号94のプルトニウム。1941年、米国でウランに重水素をぶつけて人工的に合成された。それより前に、同じく放射性元素で原子番号92のウランが天王星(ウラノス)から、同93のネプツニウムが海王星(ネプチューン)から名付けられた流れを受けた命名だった▼プルトニウムは誕生からわずか4年後、長崎に落とされた原子爆弾の元になった。ウランが使われた広島の原子爆弾とともに、人類史上まれな惨禍を起こした。「冥王」の語源は不気味な符合だ。その後、原子力の平和利用の名の下に始まった原発の副産物として、核兵器の原料になるプルトニウムが蓄積されている▼約1年前のロシアのウクライナ侵攻以降、核兵器という言葉が世界を飛び交う。無辜(むこ)の人々を、人類を、冥界に導いてはならない。(輔)