高度成長期に入った1955年ごろ、豊かさの度合いを七つに分ける家庭のランク付けが話題になったそうだ。目安にされたのが、主に家電製品の保有の有無。電灯しかない家庭が一番下の第7階級。ラジオとアイロンがあると第6階級といった具合▼第5階級はトースターと電熱器、第4階級はミキサーや扇風機の有無が指標。さらに洗濯機があると第3階級。冷蔵庫を備えた家庭は第2階級で、テレビと掃除機があれば最上位だったという。電灯のみの家庭に比べ、一番上になると家電製品がいくつも増える。当然、電気代も違っていたはずだ▼今の家電製品の保有状況なら、大半の家庭が当時の最上位クラス以上。エアコンなど保有する種類も台数も増えている。当時は約1900万世帯。今はその約3倍で、世帯数と部屋数や保有台数をかけ算すれば、電気の使用量は飛躍的に伸びているだろう▼高騰する電気代の軽減策として政府は、今月検針分から電気の使用量1キロワット時当たり7円を肩代わりする。9月までは続けるようだが、大手電力7社が値上げ申請しているため、4月以降は順次、恩恵が帳消しになる恐れもあるらしい▼ただ電気がもたらす快適さや便利さを我慢するのは容易ではない。そんなタイミングで政府は原発の最大限活用に舵(かじ)を切った。「豊かな暮らし」を続けていくには原発に頼るしかないのか-ここは考えどころだ。(己)