発表時は不評でも、後でじわじわと評価が上がり、不朽の名作になることは芸術、文化の世界では珍しくない▼アニメの巨匠・宮崎駿さんの初監督映画『ルパン三世 カリオストロの城』もその一つ。1979年の公開当時は興行的に振るわず、宮崎さんにとって不遇の時代だったと、スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫さんから聞いた▼正直意外だった。公開時、松江市の商店街の小さな映画館で見た映像は素晴らしく、今でも脳裏に残るからだ。ルパンによる堅牢(けんろう)な古城への侵入、片側が断崖となった山道での激しいカーチェイス、最後に控えた予想外の謎解き。それまでのアニメには見られない躍動感にあふれていた▼この名作の作画監督が、15日に89歳で亡くなった島根県津和野町出身の「伝説のアニメーター」大塚康生さんだ。メカや乗り物を細緻に描くのには定評があった。実際にどう動くのか、とことん観察して筆を執った。映画でルパンが乗ったイタリア車フィアットは大塚さんの愛車。サンルーフ付きのおしゃれな小型車に大排気量のエンジンを載せて道路沿いの急斜面を駆け上がらせるという荒技を描いた▼大塚さんは10代の頃、津和野などを巡り、蒸気機関車の詳細なスケッチを残した。メカへのこだわりが既に感じられる驚きの絵だ。「カリオストロの城」の評価アップに、伝説のアニメーターが果たした役割は大きい。(示)