「過小過多」という聞き慣れない造語は、日本の中小企業の実態を言い表しているだろう。生産性の低い小さな企業がひしめき合って日本経済の成長の足を引っ張っている、という意味。菅義偉首相はその「適正化」に向けて号令を発しており、合併や再編を促す考えという▼本社主催の石見政経懇話会で講師を務めた第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストが話していた。地方出身の苦労人政治家らしく菅首相に中小企業に優しい政策を期待していたら、当て外れになるらしい▼「苦労人だからこそ、弱者の甘えを許せないのだろう。『自助、共助、公助』という言葉が、その考え方を象徴している」と永濱氏▼中小企業政策の肝となっている中小企業基本法を見直すことが、首相の頭にはあるという。税制は優遇され、補助金は細部にわたり手厚い。見えを張って大企業になったため、そんな恩恵が失われて税負担が重くなるくらいなら、中小企業のままでいた方が良い、と考える経営者がいてもおかしくはない▼最近は、わざわざ資本金を減らして大企業から中小企業に仲間入りし、「弱者保護」の恩恵を受けようとするところも出てきた。同基本法によって「甘えの構造」が温存されてきた、と首相は見ているようだ。中小企業を鍛え直すつもりらしいが、過小過多を淘汰(とうた)して行き着く先が地方の疲弊だとしたら、地方創生の看板が泣く。(前)