衆院予算委で答弁する岸田文雄首相=15日
衆院予算委で答弁する岸田文雄首相=15日

 初めて入った旅先の飲食店で、メニューに「時価」と表示されていると少し緊張する。クレジットカードは持っていても、習慣で財布の中身が気になる▼岸田文雄首相は先日の国会答弁で、児童手当など家族関係社会支出が2020年度に国内総生産(GDP)の2%に達したことに触れ、さらに倍増を目指す考えを示した。ただ、翌日には発言の趣旨が修正され、倍増の基準は曖昧になった。当初の答弁通りなら、約10兆円の上積みが必要とされる財源の論議は、統一地方選後に先送りするようだ▼選挙を意識して「大盤振る舞い」をアピールしたかったのだろうが、そのメニューはこれから。支払いも、誰がどうするのかは、もちろん説明がない▼そもそも首相が掲げる「異次元の少子化対策」を巡っては、背景にある結婚、出産に踏み出せない若者の経済状態や「格差」を直視していない、との批判もある。婚姻数がピーク時に比べて半減し、連動して出生数も過去最少を更新し続けているからだ▼作家の村上龍さんは既に十数年前の著書で、少子化を招く背景として中流階級の没落を挙げ「結婚できない男と、結婚したくない女は、今後も減ることはない」と厳しい見方をしていた。その状況は、今も変わっていない。「異次元」という対策の「お品書き」を、早く見せてもらいたいし、後で支払いが回ってくるのなら「明朗会計」でお願いしたい。(己)