この一年、紙上でよく使った言葉に「3年ぶり」や「4年ぶり」がある。スポーツの大会、地域のイベント、学校行事など、さまざまな出来事の「復活」を伝える記事は、皆で新型コロナウイルス禍に耐え、乗り越えてきた証しだ▼感染が報告された年「2019」を名に持つ感染症に、山陰両県でも警戒が広がり始めたのは2020年2月だった。4月まで「感染ゼロ」が続く中、3年前のきょう付の紙面には両県の主要病院が「入院患者に面会を禁止し始めた」とある。当時の勤務地だった浜田市も警戒感でピリピリ。海辺に並ぶ県外ナンバーの車に眉をひそめ、窓が開くと息を止める。そんな空気だった▼外出自粛と巣ごもり生活、テレワークに対応してデジタル化が進み、多くのことが在宅のまま事足りるように。3年前、人のいない街を歩き、ある星のことを思い出した。松本零士さんの『銀河鉄道999』に出てくる、機械を支配するのに成功した星だ▼街には人っ子一人いない。脳波で要求すれば機械が何でもやってくれる。家でじっとしていればいい人間は肥大化し、醜い。あり得ないと思った未来だった▼松本さんの訃報に接し数十年ぶりに漫画を手にした。タイトルは「なまけものの鏡」だった。この3年間に胸を張り、松本さんが鳴らした数々の警鐘にもあらためて耳を傾けながら、これからも困難の時代を乗り越えていきたい。(吉)