<後期高齢者の父に容赦なく戦いごっこをせがむ5歳児 「やめなさい、じいちゃんが死んでしまーよ」という私「いいわや、本望だ」と父 ごめんよ、そしてありがとう。身体、大事にしてよ。>▼子育てや家族と暮らす楽しさを短文で表現する島根県の本年度「ことのは大賞」の入賞作の一つ。目に入れても痛くない、とはこのことか。親心ならぬ「爺(じじ)心」。ほほ笑ましい光景が目に浮かぶ▼こうした家族の無償の愛情は、幼い子どもにも思いやりを育むのだろう。<保育園で急な大雨 「まま、だいじょうぶかなあ」 優しいね>▼子どもを対象にした「こっころの部」で知事賞に選ばれた<体育祭のビデオカメラ「がんばれ!がんばれ!」と聞こえる母の声>と、<冬の朝 母が巻いてくれるマフラーの うっとうしさとあたたかさ>は島根県内の高校生の作品。思春期を迎えた生徒にも家族への感謝と思いやりの気持ちは根付いているようだ▼全国から寄せられたのは、前回から1351点増えて5835点。近年多かった新型コロナウイルス関連の作品が減ったのが特徴だ。それでも「一般の部」の知事賞はコロナ絡みだった。<テレワーク期間が終わり出社の日。玄関のヒールを息子が隠す。「だってママといたいんだもん」>。想像すると、心がほっこりする。マスクの着用ももうじき見直される。そろそろ平穏な日常を取り戻したい。(健)