2005年9月、衆院選を「郵政民営化」に絞り、圧勝した小泉純一郎首相(当時)=東京・永田町の自民党本部
2005年9月、衆院選を「郵政民営化」に絞り、圧勝した小泉純一郎首相(当時)=東京・永田町の自民党本部

 「七つ屋」に「十三(じゅうさん)屋」「十七(じゅうしち)屋」。何の商売か、お分かりだろうか。江戸時代の俗語で、順に質屋、櫛(くし)屋、飛脚屋のことだそうだ。質屋は1と6を足すと7になるところから「一六(いちろく)屋」とも呼ばれたという。十三屋は9+4が13になるためで、「九(苦)」と「四(死)」を避ける意味もあったとか。十七屋は、音が同じ陰暦17日夜の月を指す「十七夜」の別名「立待月(たちまちづき)」と、「たちまち着き」を掛けたらしい▼明治に入っても言葉遊びのような名付け方は続き、質屋は「一六銀行」に、無料で座れた公園などのベンチは漢字の「只(ただ)」を片仮名に分解して「ロハ台」と呼ばれたようだ。ロハ台は当時の小説などにも出てくる▼ところで現代の「十七屋」に当たる郵便の配達が、昨年あたりから「たちまち」とは言えなくなった。同じ県内なら配達は翌々日、県外は3日後が目安のようだが、土日や祝日が挟まると4、5日かかる。急ぐ場合は速達料金が必要になる▼郵政が民営化されて16年。2005年衆院選の大きな争点になった当時、こうした未来が見えていただろうか。民営化によって採算が重視され、合理化が進めば、どこかにしわ寄せは出てくる▼分割・民営化の20年先輩になる旧国鉄を巡っても、赤字ローカル線の存廃問題が再浮上している。人口が減少する中で競合手段が台頭すれば需要は減る。20年後の郵便の姿がローカル線に重なる。(己)