福島県双葉町の復興状況を説明する「ふたばプロジェクト」のメンバー(手前左から2人目)=7日
福島県双葉町の復興状況を説明する「ふたばプロジェクト」のメンバー(手前左から2人目)=7日

 96%と15%-。前者は東京電力福島第1原発の構内で、特別な防護服を着なくても作業ができるようになった面積の割合。後者はかつての原発立地地域である福島県双葉町で昨年8月30日、事故から11年半ぶりに規制が一部解除されて以降に人が住めるようになった面積の割合である▼4590人と60人-。同原発で1日に線量計を着けて構内で働く作業員と、規制解除後に双葉町へ戻ってきた人や移住してきた人の総数▼比べて何の意味があるのか。だが、原発構内と周辺地域は、5日前に現地を訪れて聞いた数の通り「動」と「静」を表していると感じた▼原発では、高濃度の放射線量を含んだ燃料デブリの取り出しや漁業者の懸念が拭えていない処理水の海洋放出など、未曽有の課題を抱えながらも、きびきびと作業員や車が動く。外部からの視察に同行する東京電力の職員のよどみない説明からは、創造的な一大プロジェクトが進んでいる感じさえする▼一方、無人になった商店や民家がまだ震災発生時の痕跡を色濃く残している双葉町の暮らしの再建は、ようやく緒に就いた。町と連動して定住支援、ツアーの受け入れや交流イベントの開催を手がける一般社団法人・ふたばプロジェクトの宇名根良平事務局長は「復興には人が必要」と言う。廃炉作業と並行して数字のアンバランスが着実に解消されることを願って、被災地の応援を続ける。(万)