私はパン屋での修業時代、毎日大きなごみ袋二つ分のパンを捨てていた。もったいなくてやるせなくて、どうせ余るから夕方にパンを焼くのをやめた。すると上司から、「販売チャンスを失うから、常に焼きたてのパンを出して!」と怒られた。

 あれから20年。タルマーリーではパンを捨てない販売システムを確立している。しかし日本の食品ロスは一向に減らない。農林水産省のデータではなんと、年間の食品ロスは522万トン。実にこれは、私たちのお米の消費量に近いという。

 捨てられた食べ物はごみとして燃やされてCO2を排出する。これはなんとも、微生物への侮辱行為ではないか。微生物は地中にも地上にも、そして私たちの腸内にもたくさんいて、あらゆるものを分解して土に返し、持続可能な循環を保つために力を注いでいるというのに…。

 土に返すルートは二つ、発酵または腐敗だ。微生物の視点に立つと、発酵とは、食べ物をよりおいしくして動物に食べさせ、腸内細菌が消化して土に返すルート。腐敗とは、最短スピードで直接土に返すルートだ。

 野生の菌で発酵食品を作る過程で何度も腐敗を経験してきた私は、...