「選挙で人に話を聞いてもらうには、どうしたらいいでしょうか」。こう尋ねると、経営の神様と呼ばれた故松下幸之助氏は「皿回しをしたらいい。人が集まったら、話をしたらいい」と答えたという▼松下政経塾1期生で、1987年4月の千葉県議選に無所属で出馬した元首相の野田佳彦氏は、皿回しはできないからと、翌日から毎朝駅前でつじ立ちした。首相の任期中を除き、今も続けているという。先月聴講した東京での講演会で、そう語った▼野田氏が最高顧問を務める立憲民主党。その支持母体・連合の芳野友子会長は、物価高を受けた賃上げを求める機運が高まる中、自民党と距離を詰める姿勢が目立つ。自民も党運動方針で連合との連携強化を明示。急接近をどう見ているのか知りたくて、会場で質問した▼連合に対しては「政策を実現したい立場なら、政権与党に呼ばれれば行くでしょう。うがった見方をするべきではない」と、意に介さず。それよりも、と諭すように「政党や連合の支援を基礎とするようでは、政治家は強くならない」と、一人一人が自力をつける方が大事なのだと説いた▼千葉県議を2期務め、国政に転じた野田氏は、街頭での地道な活動が実を結んだとき「風っていうのは、自分でつくるもの」と気付いたという。統一地方選が近づく。立候補予定者は、どれだけ市井の声に耳を傾け、語りかけているだろうか。(直)