統一地方選で投票用紙に記入する有権者。投票率の平均は9道府県の知事選、41の道府県議選ともに過去最低だった=9日、大阪市
統一地方選で投票用紙に記入する有権者。投票率の平均は9道府県の知事選、41の道府県議選ともに過去最低だった=9日、大阪市

 統一地方選前半戦の島根、鳥取を含む9道府県知事選や41道府県議選などが投開票され、それぞれの地域で住民の代表が選出された。

 ただ、投票率は依然低迷し、地域の課題について住民の意思が集約されたとは言いがたい。新たな任期が始まる首長と議員は民意に寄り添い、地方行政の大本である住民自治を機能させるべく努めてもらいたい。

 総務省によると、投票率は平均で知事選が46%台、道府県議選が41%台に落ち込み、いずれも過去最低だった。同時に行われた6政令市長選、17政令市議選も50%に届かなかった。有権者の半数超が投票しない選挙では、正統性を疑う声も出てこよう。投票率が低いと、特定勢力の支持によって当選する可能性が高まり、自治体の施策にその勢力の主張が反映されやすくなるという問題が生じる。

 そうした構図と、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側が推進した家庭教育支援条例の制定は無縁ではあるまい。一部の県や市にとどまるとはいえ、地方行政の在り方は、その地域に暮らす人たちが決めるという住民自治の理念にそぐわない。

 特に自民党は、地方議員も教団との関係が問題視された。党総裁の岸田文雄首相が指示した通り、教団との関係を断絶したか、選挙後も目を光らせる必要がある。

 各自治体は投票率向上に意を注いでいるが、特に若い世代に有権者意識を持ってもらうよう知恵を絞りたい。政府の後押しも欠かせない。

 有権者が投票権を行使しないと、住民自治の実現はおぼつかない。疲弊した地域経済の立て直し、少子高齢化や人口流出の抑制。棄権はこうした課題への対応を、首長や議員に「白紙委任」したとみなされかねないことを改めて自覚してほしい。

 統一地方選で懸念されたのは投票率に加え、無投票当選の割合だった。41道府県議選では、総定数2260のうち無投票当選は565人。割合は過去最高の前回に次ぐ25%に達した。4人に1人が選挙の洗礼を受けなかったことになる。無投票当選は多様な視点を議員、さらには議会から奪う恐れがある。女性議員の少なさからも同様のことが言える。今回の当選者は過去最多になったとはいえ、割合は男性の6分の1だ。

 首長と議員のなれ合いも生まれ、ともに住民の直接選挙で選ばれる「二元代表制」ゆえの緊張感が議会から失われかねない。

 背景には立候補や議員活動のハードルの高さがある。なり手不足解消のため、政府は「立候補休暇制度」創設などに向けて本腰を入れるべきだ。無投票当選が目立つ1人区の解消も検討に値する。

 野党第1党ながら自民党の2割弱しか候補者を擁立できなかった立憲民主党の求心力不足も要因だ。候補者が集まらないようでは支持層の拡大は望むべくもない。人材の発掘と育成、議員活動支援の充実は急務だ。

 自民党は道府県議選で、前々回と前回に続いて総定数の過半数を占めた。岸田首相ら政権側は信任を得たと受け止めるかもしれない。だが、投票率の低さや無投票当選者の7割が自民党候補であったことを考えると、そうした評価は早計だ。

 住民自治を重視するのであれば、国でも地方でも独善性を排した行政運営が求められるのは言うまでもない。