


国宝・松江城(松江市殿町)天守の東側と北側で進められていた樹木の伐採が、3月下旬に完了した。松江市が防火対策と石垣保存のために実施。見慣れた景観が変わったことに戸惑う声があるものの、市によると市民や観光客からは「天守が見えやすくなった」と好意的に受け止められているという。 (片山皓平)
範囲は約3千平方メートルでスギやマツなど49本を伐採。樹齢150年前後の木も含まれる。火災が起きた場合に燃え広がり天守に延焼する恐れがあることや、根による圧迫で石垣の崩落が懸念されていた。
伐採方針が示された2022年9月の市景観審議会では、委員から「天守はよく見えるようになるが(樹木の生い茂る現在の)景観が失われる」との意見が出た。市によると伐採後、市民からの苦情はなく「城が迫力ある見え方になった」との声が寄せられたという。コロナ禍の行動制限が緩和され松江城には多くの観光客が訪れており、横浜市の会社員女性(50)は「石垣の下から城が見えて、歴史がより伝わってくる」と笑顔。薄暗かった道が明るくなり、石垣下からカメラを構えて天守を撮影する人も多い。
※白い丸の部分を動かすと樹木伐採の前後の姿を比べることができます
一方、景観審で疑問の声を上げた委員の金坂浩史さん(51)=1級建築士=は現地を確認し「全国的に樹木の伐採が進む中、緑の天守閣として育んだ方が良かった。より良くなったとは思えない」と話した。
今後も市は石垣保護のために樹木伐採が必要との考えで、松江城・史料調査課の飯塚康行課長は「危ない木はまだある。木をなるべく残しつつ、石垣の保存にふさわしい方法を考えていきたい」と話している。
市は伐採した樹木の活用案を28日まで募集。ベンチや記念品などさまざまな用途を想定している。郵送、ファクス、メールのいずれかで同課に寄せてもらう。問い合わせは同課、電話0852(55)5959。