ワクチン接種開始を前に予約を確認し、キャンセル分に備える江口春樹院長=出雲市塩冶有原町6丁目、江口内科医院
ワクチン接種開始を前に予約を確認し、キャンセル分に備える江口春樹院長=出雲市塩冶有原町6丁目、江口内科医院

 山陰両県で新型コロナウイルスワクチンの個別接種が本格化するのを受け、打ち手となる医療機関が予約のキャンセル分の扱いに工夫を凝らしている。予約済みの希望者の日程繰り上げや、他の医療機関に連絡して対象者を確保するなど、無駄を防ぐための態勢づくりに知恵を絞る。(片山大輔、田淵浩平、月森かな子)

 余剰分を巡っては厚生労働省が廃棄を避け、有効活用するよう要請。1瓶5~6回分のワクチンは希釈後6時間以内に使う必要があり、各医療機関は突然のキャンセルが出れば、代わりの人を探す必要に迫られる。

 松江市で31日から順次、医療機関約90カ所で高齢者の個別接種が始まるのを前に、春木内科クリニック(松江市古志原2丁目)は同クリニックで接種を希望する市民の連絡先を控え、電話で前倒し接種を呼びかける対応を決めた。

 定期通院する高齢者については、最優先して7月初旬までに2回の接種を終える計画を固めているため、以降の希望者から繰り上げる。春木伸彦院長(45)は「ワクチンが限られ、希望者が殺到する中、無駄を出してはいけない」と力を込める。

 真誠会セントラルクリニック(米子市河崎)は直近の予約者は都合を変えてもらうことが難しいと考え、2週間程度先の予定者に連絡する。

 米子市で17日に高齢者の個別接種が始まった中、発熱を理由に18日発生したキャンセル1人分で早速運用。

 代わりの人を速やかに確保できたものの、今後はワクチン供給量の増加に伴い1日の接種人数を増やす予定だけに、春日正隆院長(42)は「キャンセルが多くなり、調整の手間が増える恐れがある」と神経をとがらせる。

 選択肢を広げるため、複数の医療機関での調整を考える動きもある。

 25日に接種を始める江口内科医院(出雲市塩冶有原町6丁目)は、訪問診療で連携する市内の6医療機関で希望者を紹介し合う方針。江口春樹院長(38)は「一つの医療機関では限界があり、協力してロスを防ぎたい」と話した。