G7財務相・中央銀行総裁会議に臨む鈴木財務相(右)と日銀の植田総裁=11日午後、新潟市(代表撮影)
G7財務相・中央銀行総裁会議に臨む鈴木財務相(右)と日銀の植田総裁=11日午後、新潟市(代表撮影)

 新潟市であった先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、ウクライナ支援や銀行規制・監督の在り方、低・中所得国の債務問題を主に討議した。米銀の相次ぐ経営破綻をきっかけとした米欧の金融不安は、世界経済のリスク要因となっている。G7として規制の見直しなど、金融安定への結束した取り組みを強める時だ。

 議長国の日本からは、鈴木俊一財務相、植田和男日銀総裁が出席した。

 ウクライナ問題では、オンライン参加した同国のマルチェンコ財務相を交えて、ロシアによる侵攻長期化を踏まえた支援強化策を議論。鈴木財務相は日本として、ウクライナ周辺国の支援に国際協力銀行による10億ドル(約1300億円)規模の提供を新たに表明した。

 これまでに同国や周辺国向けに計76億ドルの財政・人道支援を打ち出しており、上乗せする。西側民主陣営をリードし、ウクライナへの支援を揺るぎないものとするために必要な負担と言えよう。

 一方、ロシアの「戦争遂行能力に圧力をかけ続ける」(鈴木財務相)ことを狙った経済制裁では、「抜け穴」をふさぐ方策が焦点となった。G7枠外の第三国経由で半導体などがロシアへ流れていると伝えられるほか、中国やインドは大量の原油・ガスを輸入し、結果的にロシアを利している。G7としてこれらを見過ごさず、国際社会による取り組みを粘り強く働きかけていくべきだろう。

 米国では、3月にシリコンバレー銀行(SVB)など中堅2行が相次ぎ破綻。5月には、さらに中堅1行の経営が行き詰まった。この間、スイスの金融大手クレディ・スイスが救済買収されるなど、米欧の金融システムに対する不安は払拭されない状況が続く。

 一連の米銀破綻を通じて明らかになったのが金融規制・監督の課題であり、デジタル時代に即したその在り方が今回のG7では話し合われた。

 SVBでは交流サイト(SNS)を通じて不安が広がり、かつてないスピードで大量の預金が流出して破綻。デジタル社会特有のリスクに、監督が追い付かない実態が表面化した。トランプ前大統領時代の金融規制緩和が当局の監督機能を低下させた問題と合わせて、制度の見直しを急がねばならない。

 銀行の経営不安がなおくすぶる米国で、金融不安の新たな火種に急浮上したのが連邦政府の債務上限問題だ。来日したイエレン米財務長官は新潟市で記者会見し、早ければ6月1日に国債のデフォルト(債務不履行)が起こり得るとした上で、その場合は世界的な景気後退になりかねないと警告した。

 この問題を長引かせると金融不安を増幅させ、米国をはじめ世界経済を下押しする恐れがある。早期の事態打開を米国に求めたい。

 多くの発展途上国は新型コロナウイルス対応で財政支出が増えたところへ、米国の利上げが重なり、ドル建て債務が膨張。深刻な重荷となっており、G7はその救済策を巡り意見交換した。課題は多額の途上国融資がありながら、軽減に消極的な中国の協力である。

 日本などの働きかけで最近発足したスリランカの債権国会合は、中国の正式参加はないものの、問題前進へ向けた新たな試みだ。途上国の期待に応える結果が望まれる。